marthe

♡ 50代主婦の周辺 ♡

危機の女


フランスの小説は朝吹登水子さんの日本語で読みたい。難しそうなので敬遠していたボーヴォワールが彼女の訳だったので買ってみた。テーマが身近ですんなり頭に入った。
若くない女の心理が淡々と静かに描かれていると思ったら、あからさまな毒舌が延々と続く。女の老いが通奏低音になっていてインテリもそうじゃない人も気を病んでいる。綺麗事を書かないボーヴォワールだった。





、、、人類があたしに何をしてくれたっていうのさ、とあたしは自問するんだ。彼らが殺し合い爆撃しあいナパームで焼きあい撲滅しあうほど馬鹿ならあたしは泣くのに自分の目をつかわない。百万人の子供が虐殺されたからってそれがどうだっていうのさ?子供は下劣な野郎どもの種子でしかない。邪魔者が減って宇宙がちっとばかり空くというものだ。彼らは宇宙に人間が多すぎるって認めているじゃないか。だからどうだっていうのさ。もしあたしが地球だったらあたしの背中の上の蛆虫にぞっとするだろう。払い落してしまうだろう。あたしと何の関係もない子供達なんかに同情しないよ。あたしの娘は死んでしまったし息子は盗まれたんだからね。